がん細胞は血管も変異させる

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血管を伸ばせない癌は増殖も転移もしない
がんの血管を壊せば癌で死ぬこともなくなるのではないか
ハーバード大学小児外科医 ジュダ・フォークマン教授

新しい血管は細胞に呼び寄せられ作られます。これを血管新生といい、体に備わっている生理機能です。成人では月経時の子宮内膜や、ケガが治るとき等必要な時に起こりますが、通常はほとんど起こりません。しかしその機構を無視するものがいます。
その一つががん細胞です。

がん細胞は最初の内は体に影響を与えません。
しかし2mmを超える大きさになると、徐々に本性を表してきます。
がん細胞は増殖力が強く、普通の細胞よりも大量の酸素と栄養を必要とします。
その為実に巧妙な手を使って酸素と栄養を補給します。

通常の細胞ではありえない量の※VEGF(血管内皮増殖因子)を放出し、血管を猛烈な勢いで呼び込みます。
自分の周りに大量の血管を集め、さらに新しい血管を作らせます

本来必要に応じてしか作られないはずの新生血管なのですが、がんのせいで正常に機能しなくなり、血管はどんどん作られていきます。そして、酸素と栄養を自分のもとに大量に運ばせるのです。

がんの本当に恐ろしいところはここからで、自らの周りに呼び寄せ、作り上げた新しい血管すらも変異させてしまうのです。

通常の血管の細胞は分裂するのに約36時間程かかります。ところががんに伸びた血管の細胞は倍の速さの18時間の周期で分裂を行うのです。
さらに、実験を行いシャーレに通常の血管細胞を入れると数時間で死滅しますが、がん細胞に伸びた血管はシャーレの中で3日過ぎてもまだ増殖を続けていました。

がん細胞は普通の細胞が老化等、何らかの要因で遺伝子に傷がつき、それが重なって突然変異を起こしたものですが、自分自身増えるだけでなく、驚いたことに自らの都合のいいように周囲の細胞の遺伝子をも変異させているのです。

 

がんというのは増殖力が強く、多くの酸素と栄養を必要とします。一度血管ができるとみるみる大きくなり、体中に転移を始めます。

「それならば、血管を作らせなければいいのではないか、」と考えた人がいました。

その人こそが、記事の冒頭の言葉
「血管を伸ばせない癌は増殖も転移もしない
がんの血管を壊せば癌で死ぬこともなくなるのではないか」
と述べたジュダ・フォークマン教授です。博士は1971年に世に訴えましたが、当時他の研究者たちは「馬鹿げている」とまるで受け入れなかったそうです。

しかし博士は研究を続け実証して行きました。

その成果の現れの一つが分子標的治療薬の一種ベバシズマブ(アバスチン)です。
このベバシズマブは血管を呼び寄せる為に細胞から放出された因子(VEGF)の働きを阻害し、血管新生をおさえることで、がんの増殖を防ぎます。

まだこの薬には課題があり、副作用の可能性や使い続けることで効果が薄れてくる可能性があるとのことですが、医学は毎日進歩して行きます。いずれこの問題も解決してくれることでしょう。

ジュダ・フォークマン博士は2008年に亡くなられましたが、博士の研究は受け継がれ、更なる進歩を遂げています。

※VEGF(血管内皮増殖因子)・・細胞組織に酸素が足りない時に生成され、血管を作っている血管内皮細胞に働きかけ新しい血管を作らせる増殖因子で、本来はケガを治すときや月経時等、身体に必要なときに、必要な分だけ細胞より放出される物質

参考 サイエンスZERO「がんを制す!知られざる“血管の攻防戦”」

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